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wandering darkness
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2004/04/20 (火)
自分を持つ事


佐伯は、長谷川が好きになった。

佐伯は「私は、どんな形でも、自分を持ってる奴が好きなんだ」と笑った。
「だから、ひかるも好きなんだ」

私は、自分を持って居るんだろうか?
持ってなんか居ない、と思った。

私は二人に、そう言った。

自信も無い。
強くも無い。
他人に流される。

長谷川が「他人に流されて居る様には見えないわよ」と言った。
私は、首を横に振って「流されてばっかりだよ」と溜息を吐いた。
佐伯が「流されてる?どこが?」と訊いた。

私が「すぐ流されるんだってば」と、ちょっと怒って見せた。
佐伯が「どっちかって言うと頑固だぞ」と言った。

長谷川は「ひかる程、自分を主義で縛ってる人も珍しいわよ」と笑った。

確かに私は「主義」が多い。

佐伯と長谷川も「主義」を持って行動して居るけれど、私は違う。
私の主義は、全て病気から来て居る、と言って良い。

もっと言えば、虐待から来て居る。

いろんな意味で抵抗力の無かった私に、暴力を加えた祖母、母、姉。
他人が知って居る「私の記憶に無い過去」

私の沢山の主義の根は同じだ。
「相手の立場で考える」

殴られたら痛い。
言葉を選ばないと、心を傷付ける。
自分の責任は、自分にしか取れない。

けれど「相手の立場で考える」と言うのは、良い事では無いと解った。

それは「私なら」と言う答えしか出ないからだ。
けれど「その人なら」は無理だ。

私は「私」で「その人」にはなれない。




ふと、河野真由美の事を思い出した。

自分を持ってる奴。
佐伯には、河野真由美は「自分を持って居ない奴」に見えたのか?

そうかも知れない。

だったら、友達になるのは無理。



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