その時の一生は、平凡な女性でした。
けれど、とても恐ろしい行いとしていました。
黒人の人が家畜よりも安い値段で、競売にかけられていて、私も夫と相談して買っていました。
「品物」を選ぶような感覚で、彼らに命が宿っていると思っていないんです。
息子が奴隷に鞭をふるうのを見ても、平気なんです。
彼らが肉体の痛みを感じても、苦痛を感じる心が無いと思っているんです。
私も夫も息子達も、白人に対しては優しさも思いやりも礼儀もあって、友人の些細な不幸に涙しているんです。
なのに、奴隷には些細な過失を理由に、平然と殺してしまうんです。
近所の白人の家庭も、同じでした。
街の大きな木に、殺した奴隷を絞首刑のような形で、ぶらさげていました。
目を覆うような形相も、ズタズタの身体も、腐りかけた死体も、何も感じないんです。
催眠から現実に戻ってから、鬱状態と、恐怖のせいで不眠症になりました。
けれど前世の私にとっては、平凡な生涯だったんです。